【行政書士が解説!】告示、公示、公告の違いを初心者向けに!

行政手続を行うために法令を調べていると告示、公示、公告といった言葉をよくみかけませんか。

それぞれなんとなく意味は分かるけど、明確に意味を使い分けて読む方はそれほど多くないように感じます。

結論から言うと告示と公告は公示に包括される概念になります。

ただ使い分けられている以上はそれぞれの役割や性質があるということです。

そこでこの記事では上記の言葉の違いにつき、実際に使われている法令にて確認しつつ行政書士である私の意見とともにまとめてみました。

大前提!

実は3つとも基本的には同じ意味になります。

具体的には『一般公衆に広く知らしめる』という意味です。

現に市役所のサイトでこれらの言葉の説明を見ても、共通した定義を語っているようには思えません。

よってそれぞれの違いを理解するためには、具体的な使われ方を見つつ次の観点で共通点を把握することが必要だと判断しました。

 

①誰が行う行為なのか

②根拠法令、法規たる性質の有無

 

この2つから言葉の性質、役割の違いを確認しましょう。

1.公示とは

 

公示とは一般的に広く周知するという意味です。

どんな法律で公示が定められているの例で確認しましょう。

 

(1)地価公示法

土地鑑定委員会は~(省略)~一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示する。

 

(2)民法、民事訴訟法による公示送達

意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。

 

(3)不動産登記法

この法律は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。

 

(4)商業登記法

この法律は、商法、会社法その他の法律の規定により登記すべき事項を公示するための登記に関する制度について定めることにより、商号、会社等に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資することを目的とする。

(2)の公示送達とは意思を伝えたい相手がどこにいるか分からない場合の意思伝達手段を規定しています。この公示送達の手段をとることで行方不明の者に意思表示を到達させることが出来、例えば債権の時効消滅の成立に必要な期間を更新することが出来るといった効果があります。

以上の例から公示は次のような性質があると見受けられるのではないでしょうか。

◆公示の性質・役割◆

・一般公衆に広く知らしめて、利害関係人の権利関係を適切に示す

・一般公衆に広く知らしめて、適切に手続が完了したとみなす手段

 

公示の主体者、根拠法令など

公示の主体者は国や地方公共団体、民間です。

根拠法令は例であげたようにあります。つまり公示をすることで第三者へ効力を主張し権利義務を確定することができたり、行方が分からない人にも連絡が届いたとみなされます。

よって法規たる性質も有するといえるしょう。

2. 告示とは

告示も一般的に広く周知するという意味です。

実際に使われている例を確認しましょう。

(1)国家行政組織法

第十四条 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる

 

(2)国籍法

第十条 法務大臣は、帰化を許可したときは、官報にその旨を告示しなければならない。

 

(3)土地収用法

第二十六条 国土交通大臣又は都道府県知事は、~(省略)~第二十条の規定によつて事業の認定をしたときは、国土交通大臣にあつては官報で、都道府県知事にあつては都道府県知事が定める方法で告示しなければならない。

 

(4)都市計画法

第二十条 都道府県又は市町村は、都市計画を決定したときは、その旨を告示し、かつ、都道府県にあつては関係市町村長に、市町村にあつては都道府県知事に、第十四条第一項に規定する図書の写しを送付しなければならない

 

(5)建設業法施工令

第五条  国土交通大臣又は都道府県知事は閲覧場を設けた場合においては、とうがいえつらんじょうの閲覧規則を定めるとともに閲覧所の場所及び閲覧規則を告示しなければならない

 

以上の例から告示は次のような性質があると見受けられるのではないでしょうか。

◆告示の性質・役割◆

・行政のトップである大臣や長が一般に広く知らしめている

・『~しなければならない。』という義務が課せられているものが多い

 

告示の主体者、根拠法令など

告示の主体者は原則、大臣や地方公共団体の長、責任者です。

所轄事務で区切れば、行政権のトップが行う行為が告示と考えれば非常に重要度の高いことだと言えるでしょう。よって義務が課せられています。

例を確認しましょう。

飛行機内で危険物を輸送する際の運用基準は国土交通大臣による告示が運用基準として使われています。

ここまで細かく基準を定めるのであれば、法令である施行令、施行規則で定めても良さそうです。

なぜ告示を活用するのでしょうか。

これは各行政のトップが時勢に合わせ、迅速にフレキシブルに基準を変える方が適切だから、だと考えられています。

施行規則を改定するには内閣で全会一致の閣議決定を経て国会の決議を経る必要があるなど、どうしても迅速性に欠けます。

よって所轄事務のトップが単独で決定できるように、裁量権を与えていると考えられる、ということです。

告示には法規たる性質は当然あります。この告示に従い行政は運営されます。

3.公告とは

公告も同じように一般的に広く周知するという意味です。

実際に使われている例を確認しましょう。

(1)官報による法律及び政省令の制定、改正の公告

成立した法律に拘束力を発生するためには公布しなければならない。その手段としての官報による公告

 

(2)会社法

第四百四十条
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない

 

(3)建築基準法

市町村の長は、前条第一項又は第四項の規定による建築協定書の提出があつた場合においては、遅滞なく、その旨を公告し、二十日以上の相当の期間を定めて、これを関係人の縦覧に供さなければならない。

特定行政庁は、前項の認可をした場合においては、遅滞なく、その旨を公告しなければならない

 

(4)建設業法

第二十九条の五 国土交通大臣又は都道府県知事は、第二十八条第三項若しくは第五項、第二十九条又は第二十九条の二第一項の規定による処分をしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。

 

以上の例から公告は次のような性質があると見受けられるのではないでしょうか。

◆公告の性質・役割◆

・行政だけではなく民間業者も対象

・決定事項だけでなくプロセスの公表も含まれる

・利害関係人の利害関係を適切に調整するもの

 

公告の主体者、根拠法令など

公告の主体者は原則、国及び地方公共団体並びに民間です。

会社法では株式会社に決算を公告する義務を課しています。官報か日刊新聞紙によって公告されることが一般的です。

これは株式会社が株主に所有されているという関係から規定されています。株主であれば会社が委任先の取締役がどのような事業を行い、その結果売上高がいくら知る権利があると言え、その権利の保護としの手段が公告です。

建設業法では監督処分を受けた事業者を一般に知らしめることにより、違反をした事業者を懲らしめるといった側面もありますが、その建設業者と取引をしている発注者や事業者を保護しているとも言えます。

公告は法規たる性質は一部のケースでは有ると言えますが、多くのケースでは権利関係を保護するための事実やそのプロセスを公表する側面が強いように思います。

選挙だけは別で考えよう

このページをご覧になっている方は国政選挙や首長の知事選挙で使われる、公示の告示の違いを調べたかった方もいるかもしれません。

選挙を例に挙げなかったのは、個人的には選挙だけでは別枠で考えた方が理解しやすいと考えているからです。

結論から言えば、

衆議院議員の総選挙と3年に1度の参議院選挙は公示。それ以外の選挙は告示になります。

なぜか。

それは日本国憲法から確認出来ます。

〔天皇の国事行為

第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。

二 国会を召集すること。

三 衆議院を解散すること。

四 国会議員の総選挙の施行を公示すること

~省略~

 

ここから衆議院議員の総選挙と3年に1度の参議院選挙は公示だと読み取れます(一般的には衆議院選挙のことを総選挙と呼びますが憲法では参議院選挙も総選挙です)

次に公職選挙法の33条を確認しましょう。

第三十三条 地方公共団体の議会の議員の任期満了に因る一般選挙又は長の任期満了に因る選挙は、その任期が終る日の前三十日以内に行う。

省略

5 第一項から第三項までの選挙の期日は、次の各号の区分により、告示しなければならない
一 都道府県知事の選挙にあつては、少なくとも十七日前に
二 指定都市の長の選挙にあつては、少なくとも十四日前に
三 都道府県の議会の議員及び指定都市の議会の議員の選挙にあつては、少なくとも九日前に
四 指定都市以外の市の議会の議員及び長の選挙にあつては、少なくとも七日前に
五 町村の議会の議員及び長の選挙にあつては少なくとも五日前に

このように総選挙以外の選挙は選挙管理委員会による告示と定められています。

なぜ公示と告示を使い分けるのでしょうか。

日本国憲法にはこのような条文があります。

第4条第1項

1 天皇は、日本国憲法の定める国事行為のみを行い、国政に関する権能を有しない

憲法7条にある国事行為としての公示はあくまでも内閣の助言と承認に基づいて天皇が行います。

天皇自らの判断で公示をするわけではないということですね。

また総選挙という言葉がつくくらいです。日本国民にとって強く影響を及ぼす重大な関心事とも言えます。それを日本国の象徴である天皇が詔書という形で公示(一般公衆に広く知らしめる)することで、多くの人に情報を行き渡らせる効果を期待して制定したとも言えるでしょう。

ここまで読んでただいた方であれば告示は管轄行政のトップが行う行為なので天皇が告示をすることは憲法に反するかもしれないというご理解でもよろしいかと思います。

最後に

公示、告示、公告について私見を交えまとめてみました。

基本的には一般公衆に広く知らしめるという意味では3つとも共通しています。

私のニュアンスになり恐縮ですが 告示>公示>公告 と理解しています。告示は義務付けられるものが多く、場合によっては施行規則と同等レベルのもので、公告は保護する趣旨から情報を自主的に広めているところがあるように思うからです。

またこの記事では根拠法令を紹介していることから、3つともすべて法令に基づくものです。

何が言いたいのか。

それは書面に公示や公告とタイトルがあっても、法律を根拠とせず単純に動作名詞として使われていることもあるということです。

例えば、公示とタイトルがあっても、それは役所が自主的に公表しているものかもしれません。一種の情報開示の責務を公示という形で示していたり、住民の生命と安全を守る職務から派生していることもあるということです。例えば不審者の出没情報などを掲示板に貼り、知らしめることは全てが条例などの根拠を持つもので定められているわけではありません。

よって今回の記事で説明した使い方は基本的には法規たる性質を有するものですが、公示や公告とあっても今回まとめた使い方が絶対だと思わず、単純に情報を公開しているだけかもしれない(法規性はない)という認識を持つことは大事です。ご注意下さい。

また地方公共団体によっては独自の規程にて公示や公告の言葉の使い分けを定義付けているところもあります。

告示と公告/泉南市ウェブサイトにようこそ!

以上です。

お疲れ様でした。