【自社の利用者から運賃を収受!】特定旅客自動車運送事業とは?

この記事の要約
指定訪問介護事業が利用者からお金を貰って病院までに輸送する場合には特定旅客自動車運送事業をオススメします。介護タクシーと比較して何がメリットがあるのかコンテンツ内にてご確認下さい。

指定訪問介護事業者様に置きましては要介護等の認定を受けている利用者から「病院等に連れて行って欲しい」とお願いされたり又は自社の訪問介護員がボランティアに近い形で病院に連れて行っているという事業者もいらっしゃるということを耳にします。

しかし自社の利用者といえど、お金を貰って病院等に輸送することは原則、認められていません。運送業としてサービスを提供するためには運送業の許可を受ける必要があります。

とはいえ、介護タクシーみたく色んな場所に輸送するつもりもなく、出来れば利用者を同時に複数人、普段通院している病院に連れていきたいといったこともありますよね

その場合にオススメな運送業の許可が特定旅客自動車運送事業です。

この許可は簡単に言うとスクールバスの外注を受ける会社が必要な許可です。
取扱客、出発地と目的地やルートなどの輸送範囲等を限定して輸送の許可が下ります

スクールバスの例で言えば、学校法人がそこで働く先生や生徒を駅から学校までの輸送をバス会社に外注するといったイメージです。

これが訪問介護事業者と何が関係あるの?と思われますよね。

そこでこのコンテンツでは指定訪問介護事業者が特定旅客自動車運送事業の許可を受けるとどういうことが出来るのかについて説明します。

指定訪問介護事業者と特定旅客自動車運送事業

特定旅客自動車運送事業は運送需要者が単数のものに限定されているという条件があります。

簡単にいうと、広く一般ではなく特定の旅客を運送するための許可なので、この許可はその運送需要者とその取扱客の輸送においてのみ有効な運送業の許可ということです。

(スクールバスの例で言えば運送需要者=学校、取扱客=学校に属する先生や生徒)

何が言いたいのかというと、特定旅客自動車運送事業の許可は運送の外注契約を結ぶ度に許可を取得しないといけない、ということです。一法人、一契約でその運動需要者専用の車両として許可が下ります

一回許可を取得すれば、許可を受けた車両で他の学校とスクールバスの外注契約を何個も結べるものではありません。

これを指定訪問介護事業者に当てはめるとこうなります

運送需要者=訪問介護事業者、取扱客=要介護者等の利用者

こうすることで、要介護の利用者がケアプラン(通院等乗降介助)で通院する病院等に連れて行く有償の運送業が出来るようになります

介護タクシーとの比較&メリット

指定訪問介護事業者がケアプランに基づき利用者を病院等に連れて行くための輸送事業が出来るための許可が特定旅客自動車運送事業の許可ということがわかりました。

しかしそれだけであれば介護タクシーの許可を取得すればいいので?という考えもあるかと思います。

そこで介護タクシーより許可を取得しやすいことやメリットをまとめてみました。

◆特定旅客自動車運送事業 6つのメリット◆
  1. 財産要件がいらない
  2. 運輸開始届が不要
  3. 運賃が認可ではなく届出
  4. 介護の有資格者がなくても運送出来る
  5. 法令試験がない
  6. 同時に複数人運送出来る

それぞれ簡単に確認しましょう。

1 財産要件がいらない

財産要件とは介護タクシーは許可のためには一定以上の預金が必要です。

介護タクシーの許可では2~300万円とまとまったお金が必要になることが多く、用意が出来なくて許可が取れないことがあります

特定旅客自動車運送事業にはその財産要件はありません。

2 運輸開始届が不要

運輸開始届とは、行政手続きの一つです行政手続が介護タクシーと比べて少ないという認識で大丈夫です。

3 運賃が認可ではなく届出

介護タクシーの運賃は認可表といって、流しのタクシーと大体同じくらいの金額じゃないと認可が下りず営業が出来ません。

しかし特定旅客にはそれがありませんので任意に設定出来ます。任意に設定したものを届出すことで認めれます。

なので1回ワンコインで病院まで輸送するといったサービスも可能です。

4 介護の有資格者がなくても運送出来る

介護タクシーも特定旅客の運転手には二種免許が求められています。

しかし介護タクシーの場合には、福祉車両ではなくセダン型を使用する場合には介護の資格者が同乗することが求められます。

それが特定旅客には要件とはしてはありません。

5 法令試験がない

介護タクシーは法令試験が原則ありますが、特定旅客自動車運送事業にはありません。

6 同時に複数人運送出来る

介護タクシーは乗り合い行為は禁止されています。

自分たちがタクシーに乗っていても別の人が乗ってくることはないですよね。それに対し特定旅客自動車運送事業は複数人を同時に輸送しても問題ありません。同じ病院にいく利用者が複数人いるなら同時に通院等乗降介助が提供出来るということです。

これだけ書くと介護タクシーより輸送の目的が明確であれば特定旅客自動車運送事業の方がメリットがあるといえるでしょう

重複しますが特定旅客自動車運送事業はケアプランに基づく輸送に限定されています。通院等乗降介助が算定されていないクリニックへの輸送は出来ません

当然レジャーや観光を目的として輸送も出来ないです。

よってあくまでも病院や介護施設等に利用者を輸送したい(してあげたい)指定訪問介護事業者が取得を検討するのが特定旅客自動車運送の特徴とも言えるでしょう。

特定旅客自動車運送の事業の許可要件

では指定訪問介護事業者が特定旅客自動車運送事業の許可を取得するためには、どんな要件をクリアーすればよろしいでしょうか。

条文には細かく書いているのですが、簡単にまとめます。

  • 申請者が車両の使用権限を有すること(車検証に所有者or 使用者で氏名が確認出来る)
  • 車庫と営業所、休憩施設の使用権限が1年以上あること
  • 営業者や車庫が関係法令に抵触しないこと(建築基準法や農地法等に違反していないこと)
  • 車庫に水道・点検施設がある
  • 経営者が懲役や禁錮の刑に処せられていない
  • 経営者が道路運送法上で行政処分を受けたことがない
  • 適切な任意保険に加入している

基本的には介護タクシーの許可要件と同じです。

特筆すべきことは2点です。

1つ目は公衆の利便です。

申請に係る事業の経営により、当該路線又は営業区域に関連する他の旅客自動車運送事業者による一般旅客自動車運送事業の経営及び事業計画の維持が困難となるため、公衆の利便が著しく阻害されることとなるおそれがないこと。

簡単に言うと、路線バスが走っているエリアやルートと丸かぶりしないようにしてはいけないということです。

それなら特定旅客自動車ではなく公共交通機関を使ってねとなってしまうからです。

2つ目は事業規模の拡大となる変更の認可基準についてです。

特定旅客自動車運送事業では事業規模を拡大する際には許可要件と欠格要件以外にも別途条件が定められています。

それが次の2つです。

① 申請日前1年間及び申請日以降に自らの責に帰する重大事故を発生させていないこと。

② 申請日前1年間及び申請日以降に特に悪質と認められる道路交通法の違反(酒酔い運転、酒気帯び運転、過労運転、薬物等使用運転、無免許運転、無車検(無保険)運行及び救護義務違反(ひき逃げ)等)がないこと。

許可後の話ですがご確認ください。

介護タクシーの許可との関係性

介護タクシーの許可を受けても特定旅客自動車運送事業の許可は受けられます。

しかし車両は別々に用意しないといけません

介護タクシーの車両一台と特定旅客自動車運送事業の車両一台、合計2台が必要になります。

ただし運転手の兼務は可能です。

ぶら下がり許可も受けられる

介護タクシーの営業許可と訪問介護事所の指定を受ければぶら下がり許可が取得出来ます。

ぶら下がり許可に関してはこちらから

介護タクシーでよく聞くぶら下がり許可とは何?

ぶら下がり許可は介護タクシーの許可がなくても特定旅客自動車運送事業の許可を受けていれば取得可能です。

二種免許を持っていない介護の有資格者を運転手にしたい場合にはぶら下がり許可を取得して、ケアプランに基づく輸送を提供しましょう。

まとめ

指定訪問介護事業者が自社の利用者から運賃を貰って病院等に輸送するため必要な行政手続につきまとめました。

輸送をご希望される場合には特定旅客自動車運送事業の許可が必要です。ただし輸送先はケアプランに基づく通院等乗降介助で認められているものに限ります。

運賃は認可ではなく、届出なので任意に設定が可能です。また複数人を同時に輸送出来ることも介護タクシーと明確な差があります。

また勘違いしやすいのですが、同一法人で別の訪問介護事業所を運営している場合には一つの特定旅客自動車運送事業で輸送できそうですが出来ません。

それぞれ訪問介護事業所ごとに特定旅客自動車運送事業の許可を受けないといけないのでご確認ください。