福祉有償運送事業をやりたい!要件と登録の流れについて簡単解説

自家用有償旅客運送の一つである福祉有償運送を始めるためには国土交通大臣等から登録を受ける手続が必要です。

そのため誰しもが自由に営業出来るわけではなく、営業のルールにも制限があります。

また実際に登録を受けるためには運転手の要件などがあります。

具体的にどういうことが必要なのか、どういった流れで営業が出来るようになるのかにつき、この記事にてご確認下さい。

福祉有償運送とは

まずは定義を確認しましょう。

福祉有償運送とはNPO法人や社会福祉法人などの非営利法人が、障害者や高齢者など一人で公共交通機関を利用することが困難な方を対象に行う、ドア・ツー・ドアの有償移送サービスです。

福祉有償運送の登録要件

これらを提供するためには国土交通大臣又は国土交通大臣から事務・権限の委譲を受けた市町村または都道県知事から登録を受けなければなりません。

登録するために確認されることは次の通りです。

◆福祉有償運送登録の3つのポイント◆

①運営主体

②関係者協議

③登録手続

それぞれ確認しましょう

①登録主体

福祉有償有償運送は非営利法人しか主体になれません。つまり株式会社や合同会社などは提供出来ないということです。

具体的には次の者が主体になれます。

・NPO法人

・一般社団法人

・一般財団法人

・社会福祉法人

・商工会

中には事業者協力型のものもあります。これはバスやタクシー事業者が運行管理や整備管理に協力する形で運営主体をサポートするものです。非営利法人が運行管理などのノウハウがないことが多い故の制度ですね。

② 関係者協議

自家用有償旅客運送はあくまでもバスやタクシーなどが不足している地域で条件付きで提供出来るものです。

よって、関係者と協議して輸送範囲を定める必要があります。

そのための協議として求められるものが、地域公共交通会議か運営協議会です。いずれかにの会で申請人が交通空白地有償旅客輸送をすることにつき協議にかける必要があります。

この会には地域住民や旅客、関係するバス、タクシー事業者が参画します。バス、タクシー事業者に交通空白地有償運送が必要とされる旨を伝え、つまりバスやタクシーが十分に提供できていないので何か解決策を提案することがプロセスとして求められています。

そこでバス、タクシー事業者から良い提案が無かったとなれば公共交通機関が不足していると判断されます。

協議は原則公開で会の構成員には市町村長が含まれますので、まずは市役所などに問い合わせてみて下さい。協議日の調整をします。

③登録手続

協議が完了したら、次は登録手続です。

登録を受けるためには定めなくていけないこと及び要件を満たせていることを申請書で証明します。

申請書の提出先は運輸支局か委任を受けている市区町村のいずれかになります。

申請書の中身としては次の内容が見られます。

◆福祉有償運送の登録要件◆
  1. 運行形態
  2. 旅客の範囲
  3. 使用する自動車
  4. 運行管理、整備管理の体制
  5. 運転手
  6. 旅客から収受する対価
  7. 欠格要件に該当しない
  8. 損害賠償措置

それぞれ確認しましょう。

1 運行形態

運送の区域は、原則、運営協議会を管轄する市町村のうち協議により定められた区域です。

行き先等に制限はありませんが、発地(乗車する場所)又は着地(降車する場所)のいずれかが運送の区域内であることが必要です。

路線と区域のイメージは次の通りです。

2 旅客の範囲

旅客は誰でも乗せて良いわけではなく定めがあります。

他人の介助によらずに移動することが困難であると認められ、かつ、単独でタクシー等の公共交通機関を利用することが困難であるとして、福祉有償運送を行う法人・団体から利用登録された次に掲げる者及びその付添人が旅客の範囲です。

イ 身体障害者福祉法第4条に規定する「身体障害者」

ロ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定する「精神障害者」

ハ 障害者の雇用の促進等に関する法律第2条第4号に規定する「知的障害者」

ニ 介護保険法第19条第1項に規定する「要介護認定を受けている者

ホ 介護保険法第19条第2項に規定する「要支援認定を受けている者

へ 介護保険法施行規則第140条の62の4第2号の基準(基本チェックリスト)に該当する者

ト その他肢体不自由、内部障害(人工血液透析・肝機能障害などを含む)、知的障害、精神障害その他の障害を有する者(自閉症、学習障害などの発達障害を含む)

3 使用する自動車

使用する自動車は大きく2種類です。

◆福祉有償運送で使用する車両◆

(1)福祉車両(以下の2種類4タイプ)

   1) 車いす・ストレッチャーのままで乗降できる装置を設けた車両 リフトやスロープ型

   2) 乗降を容易にするための装置を設けた車両 リフトアップや回転シート

(2)乗車定員が11人未満の自動車(セダン型車両)

   ※運転手が介護の資格を有していない場合には、セダン等運転手講習の受講が必要です


使用する自動車は申請人に使用権限があることが必要です。つまり車検証上の使用者が登録を受ける非営利法人になっていることが確認されます。

また車検証上で使用権限が確認出来ない場合には、使用承諾書などがあれば良いともされています。

車体表示

使用車両には、自動車の両側面に次の事項を表示しなければなりません。

 イ)登録を受けた法人の名称

 ロ)「有償運送車両」の文字

 ハ)登録番号

 ※文字の大きさは縦横それぞれ5センチメートル以上です。

ただし任意保険で事故などに備えられている体制かは確認が必要です。

4 運行管理、整備管理の体制

事業主は運転手の健康や車両の状態を管理するためにそれぞれ運行管理者、整備管理者の責任者を選任する必要があります。

まずは運行管理責任者について確認しましょう。

基本的には誰でも選任できます。

ただし非営利法人である申請人が次の条件を満たす車両を福祉有償運送有に使用する場合は運行管理者資格者証の交付を受けている者が必要です。

・乗車定員11人未満の車両が5台以上

・乗車定員11人以上の車両が1台以上

次に整備管理責任者です。

こちらも基本的には誰でも選任できます。

ただし次の車両を事業に使用する場合には整備管理の有資格者を責任者として配置しなくてはいけません。

・乗車定員11人以上の車両が1台以上

事業に該当車両が含まれる場合には有資格者がいないか確認しましょう。

5 運転手

運転手は自動車免許を保有していることが求められ、次のいずれかの条件を満たすことが必要です。

◆運転手の要件◆

(1)2種運転免許保有   

(2)1種運転免許保有+自家用有償旅客運送の種類に応じた大臣認定の講習  ※

 ※ 大臣認定の講習は、福祉有償運送運転手講習が該当します。

また次の条件も大切です。

・2種免許の方は、免許停止中ではないこと、

・1種免許の方は、過去2年以内に免許停止がないこと

※ 重複しますが使用する車両がセダン型で介護の資格を有していない運転手はセダン等運転手講習の受講が必要です。

6 旅客から収受する対価

自家用有償旅客運送は非営利法人しか出来ません。

よって輸送の対価も営利性が否定され、実費の範囲内で請求することが求められます。実費とはガソリン代や人件費です。

旅客から貰える運賃の目安は大体、タクシーの2分の1とされています。もちろん実費の範囲がそれ以上になるならその金額でも大丈夫です。

また運賃も明瞭であることとあり、例えば1キロ100円とか、一回200円といった形で設定が求められます。

更に運賃は運営協議会等で協議が整ったものであることも求められます。

7 欠格要件に該当しない

福祉有償運送を登録する場合には、非営利法人やその役員がある条件に該当すると登録が認められません。

これを欠格要件といいます。79条に欠格要件で確認できます。

第七十九条の四 国土交通大臣は、第七十九条の二の規定による登録の申請が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を拒否しなければならない。

一 申請者が一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過していない者であるとき。

二 申請者が第七十九条の十二の規定による登録の取消しを受け、取消しの日から二年を経過していない者(当該登録を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しを受けた法人のその処分を受ける原因となつた事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する役員として在任した者で当該取消しの日から二年を経過していないものを含む。)であるとき。

三 申請者が自家用有償旅客運送の業務に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人が前二号又は次号のいずれかに該当する者であるとき。

四 申請者が法人である場合において、その法人の役員が前三号のいずれかに該当する者であるとき

役員が刑罰をうけたことがあるか、過去に取消処分をうけたことがあるかなど確認しましょう。

8 損害賠償措置

使用する車両が次の基準に適合する任意保険を締結していることが必要です。

 1.対人賠償の限度額が1人につき 8,000万円以上

 2.対物賠償の限度額が1事故につき 200万円以上

 3.運送主体の法令違反が原因の事故について、補償が免責となっていないこと

以上、8つの要件を満たした上で申請書を作成、提出します。

まとめ

福祉有償運送についての要件、登録までの流れをまとめました。

運営協議会でバスやタクシーなどの地域の移動ニーズについて協調することが手続き上必要です。

協調が整うとはバスやタクシー事業者から具体的な解決の提案が出なかった場合も含まれます。解決するまで話をする必要はなく、最長4ヶ月と定めがありますのでご安心ください。

また運転手が一種免許であれば大臣認定の講習の受講が必要です。

弊所は大臣認定の講習を実施できる機関として国土交通大臣から認定を受けております。

講習は座学はオンラインで学び、実技は弊所近辺で行います。(団体であれば出張講習もします)

お申込みフォームはこちらになります。

また福祉有償有償運送の登録申請でお困りの際はお問い合わせ下さい。