介護タクシーで独立 事業主が入れる労災保険について簡単解説

まとめと要約
この記事はYouTubeで配信している「介護タクシーで独立 事業主が入れる労災保険について簡単解説」の内容を文字起こししたものです。
介護タクシーで独立すると、怪我や病気になっても健康保険等の国の保険は適用されません。しかし手続きをすれば特別に加入出来る労災保険制度があります。この制度の加入手続きや補償内容、注意点等について解説します。

 
今回お話しするテーマは「介護タクシーで独立 事業主が入れる労災保険について簡単解説」です。

労災”という言葉を聞いたことがある方は沢山いらっしゃると思います。

正式名称は「労働者災害補償保険」といい、仕事中の怪我や病気に対して補償する保険制度です。(以下、労災と表します)

労災は、「労働者」と名のつく通り、労働者であれば全員加入義務があります。

とはいえ皆さんは労災の保険料を支払っているという意識はあまりないですよね。というのも、保険料は会社が支払っています労働者の保険料負担はありません

しかし、独立すると労働者ではなくなるので労災保険は対象外です。つまり、仮に介護タクシーの運転中に事故を起こし自らが怪我をしても、補償はありません。

また、治療しようにも健康保険では業務上の怪我は対象外です。つまり、業務上、怪我をしてお医者さんに診てもらってもらおうとすると全額医療費を支払わなくてはいけません

そこで今回お話しするものが介護タクシーで独立しても労災と同等の給付が受けられる「特別加入制度」 についてです。

本来、加入の対象外である者が労災の給付を特別に受けられるようにするため、「特別加入」と呼びます。

それらを踏まえ、以下の4つを柱にしてお話しいたします。

◆今回の記事でお伝えしたいこと◆

① 特別加入に必要な手続き

② どのような補償があるのか

③ 保険料はどれくらいなのか

④ 加入時の注意点

 

①特別加入に必要な手続き

加入できる対象

まず、どういう介護タクシー事業者が特別加入できるのかを確認しましょう。

加入できる対象は、原則、誰も雇っていない個人事業主です。

ただし、労働者を雇っていても、労働者を使用する日が1年間で100日未満であれば加入できます。

基本的には、誰も雇わず一人で介護タクシーをやっている方ということですね。

必要な手続き

手続きは特別加入団体を通じて行います

イメージでは、その団体を会社、構成員が労働者、という関係性です。

つまり、特別加入の手続きをしている団体へ加入することが条件となります。

②どのような補償があるのか

次に、特別加入にはどういう補償があるのかについてです。

次の7つが補償内容になります。

❶ 療養補償給付

❷ 休業補償給付

❸ 障害補償給付

❹ 傷病補償年金

❺ 遺族補償給付

❻ 葬祭料

❼ 介護補償給付

 
なんだか漢字ばかりで小難しいですね。それぞれ、砕いて端的に説明します。

❶ 療養補償給付

業務中に怪我や病気になった場合にかかる治療代が無料になります。

❷ 休業補償給付

業務上の傷病が原因で仕事が一切できない場合の給与保障です。

❸ 障害補償給付

業務上の傷病が原因で一定以上の障害が残った場合に年金または一時金で支給されるものです。

❹ 傷病補償年金

先ほど、❷で休業補償給付という休業補償があると言いました。

これは、傷病が原因で長期的に仕事が一切できない状態 かつ 一定以上の障害の程度がある場合に年金形式で生活保障をする給付です。

❺ 遺族補償給付

業務上の傷病で加入者が亡くなった場合の遺族への補償です。遺族の対象となる者や人数により、給付金額と、年金または一時金が決まります。

❻ 葬祭料

業務上の傷病が原因でお亡くなりになった方の葬祭を行った者に支払われる給付です。

❼ 介護補償給付

業務上の傷病が原因で長期的に仕事が出来ずに、傷病補償年金の給付または障害補償給付を受けている者が介護に必要な費用を支出した場合の補償です。

補償内容のまとめ

 
以上が労災特別加入の補償給付でした。

③保険料はどれくらいなのか

次に保険料について説明します。

先ほど生活保障や年金形式で給付があると言いましたが、この支給額は当然保険料の掛け金が大きいほど給付額は大きくなります

この、給付される金額の計算の基になるものが「給付基礎日額です。

1日当たりの給付額をいくらに設定するのかを介護タクシー事業者さんが任意で選び、その選んだ額によって保険料が決まるということです。

ここ、めちゃくちゃ大事なんで絶対に理解してくださいね。

給付基礎日額は全部で16段階あります。


一番高いもので25,000円、一番低いもので3,500円です。

今回の動画を撮影している時点(2021年10月16日時点)で、一番高い給付基礎日額の保障を受ける場合の年間の保険料は109,500円になります。逆に、一番低い給付基礎日額であれば年間15,324円です。


これに加えて、加入する団体への加入料や組合費を支払うというのが一般的です。

④加入時の注意点

最後に、特別加入制度の注意点につき2点説明いたします。

(1)休業補償給付の給付金について

業務上の傷病が原因で仕事が一切できない場合の生活保障ですが、”給付基礎日額の全額がもらえる”というわけではありません

大体80%相当がもらえます

つまり、一番高い25,000円の給付基礎日額であれば、1日あたりの給付金は2万円になります。

他の給付は、下記の例のように「給付基礎日額〇〇日分」という形で支給されます。

(2)通勤上の事故の扱いについて

2つ目の注意点は介護タクシー事業者は、通勤上に発生した事故は補償の対象外ということです。

一般的な事業者の労災は通勤上の事故も補償の対象となります。

しかし、介護タクシー事業者は車に乗れば仕事を始められるので、“通勤”という概念はどうしても馴染みません。対象外になります。

よって、あくまでも仕事中の事故しか補償の対象にならないという点につきご注意ください。

まとめ

お疲れさまでした!

今回は「介護タクシーで独立 事業主が入れる労災保険について簡単解説」というテーマでお話ししました。

介護タクシーの営業許可を取得する際には任意保険の加入が義務付けられますが、これはあくまでも自分が加害者となった場合の保険です。

自分への補償があるか/ないかは審査上は論点になりません。

もし、労災への特別加入はせず民間保険で対応する場合には、必ず補償の範囲をご確認下さい